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それから事情を全て話した。
「……というワケで今日から一緒に生活させていただきますね」
「ま、マジかよ」
話し終えるが男は座り込んだままだった。
急に辺りをキョロキョロし始める。
「まっまさかどこかにカメラが!?」
「は?」
「オレの知らない間に何かドッキリのつもりで――」
男はそう言いながら慌てている。
僕はなんのことだかさっぱりわからなくて黙り込んだ。
「いつの間に合鍵作ったんだよ、まったく」
どうやらまったく信じていないらしい。
手を握ったのがまずかったのか。
彼の中では手を握れた時点で僕を人間だと勘違いしたらしい。
「僕人間じゃないよ」
だからもう一度手を握り、身を寄せた。
「えっ」
「ほら。体が氷のように冷たい。僕には血が通ってないから」
ゆっくりと冷たい手をおじさんの首筋に這わした。
「ひっ」
するとまた顔色が青くなる。
「ぎゃあぁあぁ――……!!?」
そしてもう一度叫び声をあげた。
僕は反応が面白くてクスクス笑う。
(どうやら今回は退屈しなそうだ)
久しぶりに新鮮な気持ちになった僕は、恐がる彼を尻目に浮かれてしまう。
「これからよろしくお願いいたします」
そしておじさんの方を見ると歯を出して笑った。
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