序章 管理人緑真ミサキ

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 それは、突然の出来事だった。  大学が合格し、これから大学生活がスタートする所だった。  大好きな祖母に報告をした一週間後の事だった。  祖母が倒れ、そのまま祖母は帰らぬ人となってしまった。  祖母の葬儀が終わった後、母から告げられたのは祖母が管理人として働いていたアパートの事だった。  丁度一人暮らしをする予定だった。  だからこそ、僕は積極的に母に言った。 「母さん、私……管理人やるよ。おばあちゃん、死ぬまで頑張ったんだもん」  祖母はよく、色々と話をしてくれた。  自分が管理人をしているアパートの住人の事も、色々楽しそうに話してくれた。  だからこそやりたい。  やりがいのある仕事だ。  大学生活と同時に行うことで、少々大変かもしれないが、それでも頑張ってみたい事だ。  母は数分考え、何とか承知をしてくれる。  僕はその時きっと心の中で大喜びをしていただろう。  まさか、その選択で自分の人生が変わっていくという事も知らないまま。  祖母が管理人をしていたアパートは少々古びているが、とても良いところだ。  中学の時まで少しずつであるが、祖母と話をしたいため、通っていた事がある。  久しぶりにみたそのアパートは前より古びていた。 「うわ……久しぶり……」  大荷物を抱えてそのアパートに近づいていく。  このアパートに入れば、僕の新生活の幕開けになるのであろう。  胸が高鳴る。  ドキドキしていて、心臓の鼓動が聞こえてくるほどだ。 「うし……頑張るぞ!」  とりあえず気合を入れて、アパートの前にたった。  震える手でゆっくりとその扉を開けようとした瞬間――扉が完全に開きだした。  いや、僕が開いたんじゃない。  目の前に突然現れた男が、その扉を開いたのだ。  見上げてみると、まず印象に残ったのが真っ赤な髪だった。  真っ赤な髪に真っ赤な瞳。  その瞳が僕を捉えて離さない。  次の瞬間、僕は絶叫と言える大声をあげたとは、言うまでもなかった。  だって目の前に居る男は、不良みたいで怖かったからだった。
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