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僕が大声を出して数分。
僕が暮らすアパートの一室で、赤い髪の男性を招き入れました。
先ほどの侘びと、そして今日から僕が管理人と言う事を説明することだ。
急いで小さい机を出し、その机の上に即効で作ったお茶を座っている男性に渡した。
「えっと……粗茶ですが」
「……アンタが今日からここの管理人になる奴か?」
「はい。えっと……ミサキと言います。緑真ミサキ」
「そうか……美鶴(ミツル)の孫がなぁ……」
そういいながら、男性はお茶をすする。
しかし、見るからに目の前に居る男性は若い。
そんな若い男が祖母の名前を呼び捨てで呼ぶだろうか?
少し疑問と言うものが残りながら、ミサキは自分用のお茶をすすりながら答える。
「あの、えっと……お名前聞いても宜しいでしょうか?」
「ああ、そうだな……俺は太我。鬼崎太我(オニザキタイガ)だ」
「鬼崎さん……よろしくお願いします鬼崎さん」
まっすぐな赤い瞳が僕を捕らえている。
どうしてなのか分からないが、その瞳に逆らえないような気がしてならない。
まるで、その瞳が『狂気』かのように。
急いで目をそらしながら、お茶をすする。
すると、全てお茶を飲み干した鬼崎さんが僕に向かって口を開く。
「とりあえず俺が暮らしているのは二階の201号室だ。因みに一階は全て大家の美鶴が使っていた……だから一階は全てお前のもんだ」
「あ、は、はい……えっと、因みにアパートには何人暮らしているのでしょうか?」
「俺を含めて三人。今二人は外出中で居ねェ……俺は仕事が夜だから美鶴が倒れた後代理管理人としてここを任されてた……これでやっと落ち着いて仕事が出来る……心配しても、美鶴は戻って来ないしな」
(……あ)
このアパートの元、管理人の女性、緑真ミサキはもう戻ってこない。
その時の鬼崎さんの瞳は冷たく、そして寂しそうな顔をしている。
祖母の美鶴は本当に優しい人だった。
優しくて、温かい存在の人だった。
祖母はいつもいっていた。
『あたしゃ、後十年生きなきゃね……まだまだ死ねないんだよ。ミサキの花嫁姿を見るまではね』
元気そうに見えた。
祖母はその言葉を言って二日後、帰らぬ人となった。
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