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その言葉から数分沈黙が流れていった。
と言うより、一体鬼崎さんにどんな話を持ちかければいいのか分からなかった。
汗が、徐々にあふれ出していくのを感じた。
握っていた拳に汗が滲み出していた時、鬼崎さんのため息が聞こえてきた。
「……まぁ、突然信じろだなんて言ってない。けど、これだけは言っておく」
「……はい?」
「『俺たち』は人間ではない……だから、警戒心だけは持っていろ」
その時の目は真剣で、吸い込まれそうな赤い瞳が自分を捕らえて離さなかった。
瞬間、寒気を覚えた。
一瞬、空気が変わった感覚だった。
微かに身震いを感じた後、鬼崎さんは立ち上がる。
「じゃあ俺は部屋に戻る……あ、ところでミサキ」
「うぇ!は、はい!?」
「お前、飯は作れるか?料理できるか?」
「え?あ……はい。和食全般だったら何とかなります」
「……ああ、俺好みだ」
「??」
その意味がサッパリ理解が出来ない僕だったが、その時の鬼崎さんの笑顔をこれから絶対に忘れる事はないだろう。
彼は笑った。
けど、その笑いに、どこか恐怖を覚えた。
目がまるで笑っておらず、野獣のような、そんな瞳をしていた。
鬼崎さんがその場を離れた後、残された僕は思った。
(……僕、ここでこれからやっていけるのかな?)
不安が募りながらも、僕はここの管理人アパート生活がスタートした。
これから待ち起こる、波乱万丈も知らずに。
そして鬼崎さんの話が本当だと言う事も――……。
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