第八話 鬼はただ、普通の愛を求めただけで

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 僕のその言葉と同時に弧宮さんが動き出す。  僕から離れ、そのまま鬼崎さんの所に行き、鬼崎さんが先ほど置いたメモに手を伸ばし、書かれていることを読み始めた。  離れたことで、鬼崎さんの怒りが少しずつ収まりつつ、弧宮さんはそのメモの内容を何も言わずに読み続け、そして口を開いた。 「…………お前さ、これ、お前とミサキの恋愛みたいな感じじゃん」 「そのつもりで書いたんだが」 「破いていい?ものすごく破りたくなってきた」 「やめろよお前。それ新作で出す予定なんだから」 「……メモの内容って何?ミサキ?」 「えっと……趣味の方の小説のネタらしいです」  二人の変な会話の中、僕と烏丸さんはそんな二人を見つめながら居る姿があった。  とりあえず、鬼崎さんはこの内容で新作を出したいらしく。  一方の弧宮さんは、何だか気に入らないらしく。  二人の会話が静かに続く中、僕はとりあえず烏丸さんと共に昼食の仕度を始めるのであった。   * * *   昼食が終わり、弧宮さんは仕事に戻り、烏丸さんも仕事があるということで出かけ、鬼崎さんと二人になり、鬼崎さんにお茶を飲んでもらうために準備しているときだった。 「お前、あのメモ内容、納得いかなかったか?」 「え?」  煙草を口に銜えながら、鬼崎さんはそう呟いた。  メモのネタ内容と言う事は、先ほどの趣味で書いている新作のネタの話だろうか?  内容の事を思い出した後、僕の顔は多分赤面しているかもしれない。  少し目を逸らしながら、僕は口を開く。 「そ、そりゃあ、納得は出来ないですよ。あれじゃまるで僕であって僕でないような、そんな感じでしたし……そ、それに」 「それに?」 「お、鬼崎さんはおばあちゃんが好きなんですよね?だったら別に僕じゃなくて、おばあちゃんをモデルにした小説を書くって言うことは……」 「……」  鬼崎さんは何も言わなかった。  ただ静かに、僕を見ていた。
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