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僕のその言葉と同時に弧宮さんが動き出す。
僕から離れ、そのまま鬼崎さんの所に行き、鬼崎さんが先ほど置いたメモに手を伸ばし、書かれていることを読み始めた。
離れたことで、鬼崎さんの怒りが少しずつ収まりつつ、弧宮さんはそのメモの内容を何も言わずに読み続け、そして口を開いた。
「…………お前さ、これ、お前とミサキの恋愛みたいな感じじゃん」
「そのつもりで書いたんだが」
「破いていい?ものすごく破りたくなってきた」
「やめろよお前。それ新作で出す予定なんだから」
「……メモの内容って何?ミサキ?」
「えっと……趣味の方の小説のネタらしいです」
二人の変な会話の中、僕と烏丸さんはそんな二人を見つめながら居る姿があった。
とりあえず、鬼崎さんはこの内容で新作を出したいらしく。
一方の弧宮さんは、何だか気に入らないらしく。
二人の会話が静かに続く中、僕はとりあえず烏丸さんと共に昼食の仕度を始めるのであった。
* * *
昼食が終わり、弧宮さんは仕事に戻り、烏丸さんも仕事があるということで出かけ、鬼崎さんと二人になり、鬼崎さんにお茶を飲んでもらうために準備しているときだった。
「お前、あのメモ内容、納得いかなかったか?」
「え?」
煙草を口に銜えながら、鬼崎さんはそう呟いた。
メモのネタ内容と言う事は、先ほどの趣味で書いている新作のネタの話だろうか?
内容の事を思い出した後、僕の顔は多分赤面しているかもしれない。
少し目を逸らしながら、僕は口を開く。
「そ、そりゃあ、納得は出来ないですよ。あれじゃまるで僕であって僕でないような、そんな感じでしたし……そ、それに」
「それに?」
「お、鬼崎さんはおばあちゃんが好きなんですよね?だったら別に僕じゃなくて、おばあちゃんをモデルにした小説を書くって言うことは……」
「……」
鬼崎さんは何も言わなかった。
ただ静かに、僕を見ていた。
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