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「どうしたんだ、ミサキ?」
「のわぁぁぁあああぁああ!!」
次の瞬間、気配を消して現れたのは一人の男、204号室に住み始めた男、蛇八晋吾さんの姿だった。
彼が出てきた事により心臓が爆発しそうになりかけ、余計に顔が真っ赤になってしまったかもしれない。
(って言うか気配を消して出てこないで下さい!!)
「どうした?顔が真っ赤だぞミサキ?鬼崎と何かあったか?」
「あ、いや、そ、その、な、なんでもありましぇ、じゃなかった。なんでもありませんよ!」
「そうか……俺はてっきり、お前に告ってしまったのではないだろうかと思ってしまった」
「え?こ、告る?……告るぅぅううう!!」
「何だ?違うのか?」
「ち、違います違います!!そ、そもそも鬼崎さんは――」
そして何故かその先の言葉が、蛇八さんに言えることはなかった。
(鬼崎さんは、おばあちゃんが好きなんだ)
烏丸さんのように、鬼崎さんは祖母の美鶴の事を愛していたと言っていた。
多分、鬼崎さんは僕に向けている視線は、祖母の美鶴の面影を見ているからに違いないと思っていた。
絶対にそうだと、断言できた。
言葉を止めた僕に対し、蛇八さんは口を動かし続ける。
「『鬼崎さんは』の続きは聞きたいが……まぁ、俺から見るとあの男はお前の事、好いていると思うんだがな?」
「……え?」
「お前を見ているアイツの瞳は、お前の事を愛しく思う目だと思うぞ?しぐれが恋人の写真を見せたときの目と、同じ目だったからな」
「……そ、それは……」
――それは多分、祖母と僕を重ねているからだと、と言う言葉が出なかった。
何も言えず、言葉を閉ざしてしまう。
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