第八話 鬼はただ、普通の愛を求めただけで

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(……僕が、鬼崎さんの事、好き?)  蛇八さんの言葉に、僕はただ反応すら出来ず、呆然としながら居る。  頭の中で何度か考えた後、まるで作り笑いのように、僕は蛇八さんに向かって答えた。 「……いやいや、ないないですよ。僕が鬼崎さんの事好きなんて」 「何だ、自覚ないのかお前」 「自覚もなにも、ないですよ!だって鬼崎さんを見てドキドキみたいなことしないし…………多分」 「……」  本当はわからなかった。  元々、僕は『恋愛』と言うものをしたことが無かったから。  烏丸さん、弧宮さん、そして鬼崎さんが恋をしていた祖母、『美鶴』  蛇八さんが、本当に愛した(?)人、父の『時雨』  彼らにはそれぞれ、好きだという人が居た。  だが、僕は生まれて『恋愛』と言うものをしたことがなかったから、どういうものなのかわからない。  現に鬼崎さんを見て、僕の心は変になりつつあったからだ。 「聞いてもいいかミサキ」 「あ、はい」 「お前、恋愛したことないだろ?」 「…………」  蛇八さんの言葉に、僕は何もいえないまま、汗をだらだらと流し続けることしか出来なかったという。  言葉を閉ざし、僕は笑顔を見せながらだらだら流し続けていた。
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