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(……僕が、鬼崎さんの事、好き?)
蛇八さんの言葉に、僕はただ反応すら出来ず、呆然としながら居る。
頭の中で何度か考えた後、まるで作り笑いのように、僕は蛇八さんに向かって答えた。
「……いやいや、ないないですよ。僕が鬼崎さんの事好きなんて」
「何だ、自覚ないのかお前」
「自覚もなにも、ないですよ!だって鬼崎さんを見てドキドキみたいなことしないし…………多分」
「……」
本当はわからなかった。
元々、僕は『恋愛』と言うものをしたことが無かったから。
烏丸さん、弧宮さん、そして鬼崎さんが恋をしていた祖母、『美鶴』
蛇八さんが、本当に愛した(?)人、父の『時雨』
彼らにはそれぞれ、好きだという人が居た。
だが、僕は生まれて『恋愛』と言うものをしたことがなかったから、どういうものなのかわからない。
現に鬼崎さんを見て、僕の心は変になりつつあったからだ。
「聞いてもいいかミサキ」
「あ、はい」
「お前、恋愛したことないだろ?」
「…………」
蛇八さんの言葉に、僕は何もいえないまま、汗をだらだらと流し続けることしか出来なかったという。
言葉を閉ざし、僕は笑顔を見せながらだらだら流し続けていた。
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