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そんなこんなで、あれよあれよとケーキ作りを教えることになってしまった。
放課後、図書館への道を歩きながら考える。
どうやら川崎さんの彼氏の誕生日が近いらしく、そのためにケーキを作りたいのだそうだ。
誕生日っぽいケーキ!
というご要望だ。
っぽいって…言われてもなあ。
今日図書館にいったら、かるくレシピを調べてみよう。
図書館のドアをくぐって、中に入る。
無意識のうちに、周りを見渡した。
「チビ」
「!」
後ろから声を掛けられて、身体がびくついた。振り返るとそこには皆瀬くんが立っていた。
皆瀬くんは声を掛けたにも関わらず一人でずんずんと先に行ってしまって、本棚の影に消える。
……やっぱりよくわからない。
私もカウンターに本を返却してから、料理本の方を中心に眺める。
……結構あるんだ。
めぼしいものを何冊か抱える。
一冊一冊が大きいから、かさ張って重たい。
図書館の備え付けのテーブルと椅子に腰掛け、脇に抱えた料理本を置いた。
まずは一冊目をパラパラと捲る。
なるべく見栄えがいいもの、と言われていたから、見た目を中心に選ぼうと思っていた。
ガトーショコラ…タルト…ショートケーキ…ううん……。
次々にページを捲る。
目ぼしいものが見つからず、次の本へ。
すると、かたりと隣から音がして、誰かが椅子を引いた。
首を回すと、皆瀬くんが腰を下ろそうとしている最中だった。その手にはハードカバーの分厚い本が握られている。
皆瀬くんが視線に気付いて、目線が交わった。
やがて私の積まれた本に気が付いて、顔をしかめた。
「……ケーキ?なんでまた」
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