西日

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ひゅう。木枯らしが足元を駆け抜ける。 マフラーに顔を埋めながら、帰路をとことこと歩いた。 その隣には友人の姿はない。私は高校に入学してから、まだ特定の友人を作れずにいた。 北国に、雪がやってくる。 寒さは日を追うごとに増して、マフラーや手袋だけの防寒では少々寒い。 「………」 私は人と喋るのが苦手だった。 つっかえてしまって、上手に喋られないのだ。 慣れ親しんだ両親との会話ですら、私は何度もつっかえた。 少し、言葉が下手だ。 それは障害とかそういうレベルのものではなかったが、友人を作ろうとした時に、この喋り方が原因でうまくいかない。 私は何時しか友人を作ることは諦め、思考は完全に1人で過ごすことを前提としたものにシフトしていた。 私の唯一の友人といえば、本。 私は本の虫だった。 今も、学校からの帰路とはいえど、図書館に寄ろうとしている。 ……学校の図書室はすこし苦手だった。
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