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そして、今日もまた、図書館に通う道を歩いていた。
昨日の本は中々面白くて、ページをめくる手が止まらなかった。
本を読み終わった時、あの男の子のことを思い出した。
普段学校で、意識して人の顔を見ることはない。学校では見掛けたことがないように感じるけど、忘れてるだけかも。
……ありがとうって、上手に言えたらいいのに。
そんなことを思い出していると、図書館にはあっさりと着いた。
いつも通り本を返却して、また物色を始める。
「……あ」
昨日読んだ本、続きが出てるんだ。
相変わらずそれは本棚の上段に整列していた。
「うー…ぅ、ん」
一生懸命背伸びをしてみる。やっぱり駄目だ。
ジャンプは……うるさいって言われたからしないでおこう。
「だ、め…」
私は司書さんに取ってもらうこともできない。うまく話せないというのは、私の日常生活での最大の難点だった。
………諦めよう。
伸ばしていた手を下ろそうとしたとき、また横からスイッと本を抜き取る手が見えた。
「チビ……、頼めばいいだろ」
昨日の、男の子だった。
相変わらず、眉間に皺と細められた目。
今抜き取った本で私の頭をぱこんと軽く叩く。頭をおさえると、男の子はそのまま手を離し、文庫本は私の手に渡る。
男の子はふぅと息を吐き、背中を向けた。
あ…行っちゃう。
そう思った瞬間、考えるよりも先に、私は思わずブレザーの裾を掴んで、引き留めてしまった。
男の子は驚いたようで、振り返る。
「あ…、あり…、が、と…う……」
「………いーえ。別に」
ふいっと、男の子はまた背中を向けた。掴んでいた手を離して、私もカウンターに向かった。
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