西日

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異変に気が付いたのは、次の日の教室でだった。担任がホームルームの時間に、あの名前を呼んだからだ。 「皆瀬」 思わずぱっと顔を上げた。 そこには、あの図書館で出会う皆瀬くんがいた。 相変わらず無表情。でも眉間の皺はほとんど刻まれていない。眼鏡をかけている。 ……同じクラスだったんだ。 私をチビと呼び、初対面でウルサイと顔をしかめ、そのくせ毎日シリーズものの巻を取ってくれた男の子。 私の言葉を、急かさないで聞いてくれる、男の子。 ……気付かなかった。 改めて自分はよほど人の顔を覚えられないらしいと気が付いた。
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