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荒廃した夜の街を、一つの影が飛んでいく。
辺りに人影はなく、あるのは見るも無残な一つの文化の終焉だけである。
瓦礫の散乱する街道を飛んで飛んで降り立ったのは、さびれたビルのドアの前。
影は軋むドアを開け、地下へと続く階段下へ消えた。
階段を下りた先には一つのドア。そのドアを開けると…
『レディースアーンドジェントルメーン!!諸君、今日はここ、カジノ「HITOZATO」で思う存分稼いでいってくれたまえ!』
地上の風景からは想像できないほどの熱気があった。
影はそんな熱気から逃げるようにバーテンダーのいる静かなカウンターへ向かう。
「マスター、Mカクテルを一つ。」
「かしこまりました。」
バーテンダーに注文を終え、被っていたフードを取る。
「ふう…。いつまで経ってもここの空気は慣れないな。」
そこにはまだ幼さの残る若い女の顔があった。
「ハハハ、一番お気に入りのカクテルを頼んでおいて豪気なもんだ。」
一人の男がカウンターの女に話しかける。
「大佐か、お気に入りなんかじゃない。他に飲みたいのがないだけだ。」
「フフフ、まあ、そういうことにしておいてやろう。」
「大佐」と呼ばれた男は女の隣の席に座った。
男はバーテンダーにロックのウィスキーを頼むと、女の方へ向き直る。
「久しぶりだな。魔理沙。」
「大佐こそ、会わないうちにだいぶ老けたんじゃないか?」
魔理沙と呼ばれた女は微笑を浮かべながらそう返す。
「俺はまだ30だぞ?老けるはずがない。」
男は肩をすくめて半分あきれたように言った。
「はん、どうだか。」
魔理沙は来たばかりのカクテルを一口あおる。
「口が悪いのは相変わらずなようだな。それに俺はもう大佐じゃない。いい加減「大佐」って呼ぶのはやめてくれよ。」
「私にとって大佐は大佐だ。それ以上でもそれ以下でもない。」
「そう言うと思ったよ。だがな、俺にも『超島火炎』っていうちゃんとした名前があるんだ。」
「知ってるよ。浄化の炎『メガ・フレア』だろ?」
「それも幾分昔の話だな。ご覧のとおり、今はしがない情報屋さ。」
火炎と名乗った男はウィスキーをあおると、苦笑した。
「それで、頼みたいことってのはなんなんだ?」
グラスの底にあるマッシュルームを食べながら、魔理沙は火炎に問いかける。
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