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少年はその時、炎とは闇なのだと知った。
強い光を放ち闇とは対極にありそうだが、人の目をくらませ視界を奪うという点においては暗闇も同然だった。
そして何より、眼前を覆い尽くす火炎を巻き起こす魔人の存在が、光と対になる暗黒であると少年に思い起こさせたのだ。
魔人が腕を振るい熱風が吹き荒れれば、火の粉が宙を舞う。
乾いた風が肌から、口から水分を奪っていく。
緋色のゆらめきに包まれて、魔人は高らかに笑った。
その高揚感に促されてか、空気は竜巻のように荒ぶる渦を巻き、燃え盛る炎に力を与えていく。
そう、目の前にあるのは人間が暖をとり、料理をするためにおこした火ではない。
雷が落ちたとき、あるいは火山が噴火したときに人々の前に姿を現す、天然自然の炎。
人の支配を受け付けることのないその巨大な力は、やがて人のかたちを成して顕現する。
古代の人々はそれを、神と呼んだ。
「――それを奪う権利は誰も持っちゃあいねえ。神様だろうがなんだろうがな!」
だが、少年は目の前の魔人が成そうとすることに異議を唱えた。
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