149人が本棚に入れています
本棚に追加
紅蓮の炎が支配せんとする大地を蹴って、少年は一直線に魔人へと向かっていく。
「人と――!」
その手には剣。鍛え抜かれた鋼の織り成した刀。
一心不乱に打たれる少年の剣技。しかし魔人は不死鳥のように燃える尾を引きながら、少年の刃を華麗にかわしていった。
鋼鉄の光が、紅蓮の閃光を追いかける。
追う月、避ける太陽。
少年は汗を流し、呼吸を荒くしながらも、魔人に迫るのをやめなかった。
「俺の全てが・・・・・・」
刀を袈裟懸けに振り下ろしたとき、少年の両腕はほとんど限界だった。
それでも。
「俺の全てが、お前を許さないって言ってるんだよ!」
筋肉が悲鳴をあげようと、少年――神田リュウジは刀を大上段に構え、再び魔人へと突進した。
乾坤一擲。持てるすべての力を振り絞って、リュウジはぎりりと刀の柄を握り締め、駆ける。
それに応えんと刀は小さく鍔鳴りし、刃紋波打つ刀身は氷のように透き通った輝きを放った。
最初のコメントを投稿しよう!