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「じゃあ、あれだ。もしもユリがてっちゃんとうまく行かなくなったら、一緒に住もうか?」
「へ?」
「その子と一緒に、私がうんと大事にして、うんと甘やかしてあげるよ?ワキ見するようなてっちゃんなんかよりもさ」
「っ!?え?え?……もう!ジンっ!?そんな。え?嘘……てっちゃん、なんか言ってたの?さっき」
「あはは。嘘だよ。嘘。てっちゃん、ユリにべた惚れ。大丈夫だって、世界で一番幸せになるって」
「もう!ジンってば!」
「ずっと祈ってるから。ユリがいつでも世界で一番幸せでありますようにって」
「……じゃあ、ジンは世界で二番目に幸せでありますようにって、お祈りするね?」
「サンキュ」
ジンは笑って、また、じっと水槽を見た。
「……あのさ、ユリ?」
「ん?」
ジンはあたしを見ない。水槽の中を泳ぎ回る、魚以外の何かを熱心に探しているみたい。
でも、眉間に薄いシワ。すっと耳たぶに手をやる。
まただ。ジンのクセ。
なんだろ?何かひっかかる。じわじわと不安がよぎる。
「なあに?ジン」
「沖縄、行ってくる」
「え?嘘。いつ?」
「急なんだけど、来週月曜日に」
「月曜?やだ。結婚式の最終打ち合わせだ。お見送り行けないよ?」
「いいよ。大丈夫」
「いつ帰ってくる?結婚式には間に合うよね?」
「……ごめん」
「なんで?そんな」
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