1:DEEP SEA

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 チヒロは、座ったとたんに運ばれてきた、オーダーしていないジンバックを喉を鳴らして飲む。  ここは、バーテンダーが常連の好みを熟知していて、いつもと変わりない場合は何も言わなくても、いつもと同じものが出てくる。  ユリからのメール 『ジン!ありがとう!! ヾ(≧∇≦)〃今、サプライズバースディパーティ真っ最中💓 これのことだったんだね? さっきのてっちゃんの電話(*´∇`*)本当にありがとう💓本当はジンにも来て欲しかったなぁ(;o;)💦 私たちの友情は永遠だよ✨沖縄、気を付けて行ってきて。帰ってくるの楽しみ待ってるから♪』 に『改めておめでとう』と打つと  「やだ。何その業務連絡みたいなメールは」 チヒロに笑われた。  「幸せそうだから、何て打てばいいか……わからなくなる」  素直な思いを口に出せる。それを聞いてくれる人がいる。  それが、今はかなりありがたい。  雨に誘われてつい土の下から這い出てしまった蚯蚓(ミミズ)が日差しに焼かれてのたうち、湿った土中に潜る間もなく干乾びてしまったように、もうその気持ちはそうなんだって自覚しちゃったから。  夕べ、まざまざと思い知った。  チヒロの指が私の顎先を弾いた。  「痛いってば」  「うふふ。困ってるならいくらでも助けてあげるのにって?これから、そういうのはアタシにしなくちゃ、ね?」
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