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なんとなく馴染んできたキャンパスから歩いて五分の場所にあるキャッシュオンデリバリーのカフェテリアのテラスに置かれたテーブルで私はアイスコーヒーを飲みながらふと思った。
彼に手紙を、削除して目の前から消してしまえるようなメールじゃなくて、手紙を書こう。
【元気?大学、無事に合格して良かったね。あれからあんまり話せなくて、そのまま卒業しちゃったけど、ずっとおめでとうって言いたかったんだ】……
言葉の続きを探す。
淡いグリーンの便箋から目を上げる。
【あなたが私と付き合ってくれてるあいだ、私は楽しかった】……
グラスの中の氷をストローでつつく。
くるりかき混ぜる。
カラカランと音を立てて。
風がふわりと緑の匂いを運ぶ。
だんだんと薄まっていくアイスコーヒー。
ひとくち飲む。
バッグの中に潜ませた煙草に手を伸ばす。
でもためらう。
寂しさに火をつける。
虚しさを吸い込む。
溜息と、吐く。
彼が吸ってた煙草。
別れてから私が覚えた煙草。
だけど。
空を見上げる。
お日さまはちょうど真上。
もうすぐ来る。
その前に書き終えたい。
この手紙が彼の心に届けばいい。
【けど、苦しかった】……
一枚目の便箋を切り取る。
くしゃと丸めテーブルに置く。
違う。
私が言いたいことは、こんなことなんかじゃない。
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