7:SMILE for

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「あらやあだ。そんな怖い声出したりして。ママがそんなだから子供がああなるんじゃなぁい?くすくす」 「なんの話?」 「タカユキから聞いたわよぉ。せっかくお誕生プレゼントあげるって言ってあげたのに、すっごい素っ気なく言ったんですってぇ?イラナイって?」 くっくっくと受話器の向こう側で、女はくぐもった笑い声を上げる。 その煙のような笑い声は、 何キロもの距離の電話線を走りながら毒を溜めていき、 ふわりと私の口元に放たれる。 めらりと炎が上がった。 息が浅くなっていくのが、わかる。 吸い込むのは受話器から漂う、毒。 鼻から口から吐き出される、めらめらとかげろうのような、炎。 どうか、あの女を焼いてほしい。 真黒な炭になるまで焼き尽くしてほしい。 でも、その炎を含ませるための言葉も笑い声も、出てこない。 「ほんとかわい気のない子よねぇ?ママそっくりで。あはは」 ばかばかしい間違いを嘲笑うような、笑い声だった。 「…それを言うためにわざわざ電話してきたんですか?」 「あらまさか。違うわよ?そんな暇ないもの。今のはマクラよ。本題の前の、あれ。ツカミって感じ?ふふふ」 これ以上、聞きたくもないのに、なんで電話を切らなかったんだろう。 女は楽しそうな声で続けた。 「あのね、くすっ」 「何なんですかっ!」 「消えて」 「は?」 「アタシ、今、赤ちゃんいるのよ。タカユキの。でね思ったんだけど、この世にタカユキの子が他にいるとか、あり得ないし。しかも孝之が好き、で、好孝って、何それ?ないでしょ?そんなのって。だから?」 「おい、いい加減よせよ」 受話器の向こう側で、孝之の声がした。 がちゃんと叩きつけて電話を切った。 真っ赤に燃えた鉄を握り締めているみたいだった。 焼け着いた肉がこびりつくように、受話器から手を離すことができなかった。
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