7:SMILE for

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さぞびっくりするだろう。 でも、泣くほど知った仲じゃない。 そのうちに自分の生活に忙しくて、忘れるんでしょ? 遠く高く高く飛ぶ。フライング・ハイ。 あ、そんな曲なかった? あれ? 誰か、プロレスラーとかの入場テーマ曲じゃなかった? お父さんが好きだったプロレス。あぐらの中で見たような記憶があるけど… ああ。そうだ。 あれはまだ古い貸家に住んでいた頃だ。 ビールのゲップ。ひげでじょりじょりの顎先。 お母さんが作る唐揚げの匂い。 唐揚げ。 好孝の大好物。 孝之も美味しい美味しいって… なのに… ああ。もう、飛ぼう。 お父さん お母さん ばかでごめんなさい。 好孝… そうか。 だめだ。 好孝を置いていけない。 手すりから手を離す。 一緒、連れて飛ぼう。 ピンポン!ピンポン!とインタホンが鳴った。 好孝だ。 好孝、おかえりなさい。 さ、抱っこして、あとは飛ぼう。 インタホンのモニターを見ると、朝のボスキャラ藤堂の 困っちゃうわねほんと、と言いた気な笑顔が アップ気味に映っていた。 いや。 なんであんたが? 「…はい?」 「藤堂です。良かった。相馬さん、いたのね?バス着いちゃったから、ヨシ君も受け取っといたけど?」
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