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ヨシ君だって?
受け取っといた?
いつ友達になった?
というか、
ついでに受け取ったって荷物扱い?
「あ、ごめんなさい。うっかりして時間間違えました。あの、そのままエレベーターで帰って来るように言って頂けますか?」
「もうお宅の前よ?あ、濡れてるからタオルもね」
濡れてる自分の世話をする間もなかった。
とりあえず頭からバスタオルを被ってドアを開けると、びしょびしょの、藤堂と翼君と、好孝が立っていた。
藤堂は、私を見て目を丸くした。
「相馬さんもずぶ濡れね?どうかした?」
「…あ。いえ。あんまりすごい雨だったから、ちょっと…様子を見ようとして…あの、テラスに出たら…」
「あははは!やだ!親子ね!似てるぅ!」
「え?」
「傘さしてお迎えに行ったんだけど、ヨシ君、雨、楽しいって。傘いらないって言って。うちの翼も、琢磨も光樹も輪も、傘イラナイって。そこらじゅう子犬みたいに走りまわって皆びしょびしょよ」
あはは。まったく子供はね、と藤堂は言いながら、快活に笑った。
「あの、ありがとうございました。すみませんでした…」
「あーあーいーのよ。気にしないで。ヨシ君、すっごい楽しそうだったわよ?もう全然、溶け込んでて」
藤堂は、他人の子供なのに、まるで親戚の子供にするように好孝の頭を撫でた。
好孝もにこにこしている。
確かに好孝の顔は、朝と違う。
雨に濡れているのに、惨めさなんか少しもない。
野性的な何かが浮き立つように、
軽やかな雰囲気で目を煌めかせ、
わくわくしているような表情で、
翼君と小突きあってる。
今にも吹き出して笑い転げる 一歩手前。
「子供はいいわね。こんなことで笑えて。なんか見習いたくなっちゃうわ」
「え?…ええ」
藤堂は笑って軽く肩をすくめると「じゃあまた明日。お互い、風邪引かないようにしようね」と手を振って帰って行った。
ドアを閉める。
「すっげーおもしろかった!」
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