7:SMILE for

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好孝が弾むような足取りで歩く。本当に朝とは違う顔だ。 「翼も琢磨も光樹も輪も、すっごいいいやつなんだ。ボク…あ、オレらもうちょーぜつ親友だよ」 「…そう」 「オレ、ここに来て良かったぁ。変なイジワルおばさんもいないしさ」 好孝はくるくる回りながら部屋の中を行ったり来たりしている。 「?…意地悪おばさん?誰のこと?」 「パパのことちょーだいってオレに言ったんだ。イジワルおばさん。口が真っ赤でなんか変な匂いで。オレ、絶対にあの人はワルモノだと思う」 まさか?…あの女? 好孝は、床にぱたんと倒れると「あーぐるぐるするぅ」と言って笑った。 「ね?好孝、それっていつのこと?」 「忘れたぁ。でもさ、オレがイジワルおばさんの話したらさ、翼も琢磨も光樹も輪も一緒にやっつけてくれるって!大人になったらオレ達、ゴーセンジャーになるって約束したんだ!」 ふっきれたような、きらきらした笑顔だった。 その時 ふと 大人になった好孝の顔が見えた ような気がした。 ああ。そうか。 飛んだりしたら だめ、なんだ。 答えるように、さあっと窓から光が差してきた。 「あー!ママ!ママ!見て!虹!かまぼこみたい!」 寝転がったままの好孝の弾んだ声に顔を上げる。 窓の外。 海の上にきれいな半円の虹が微笑んでいる。 「すっげー!きれー!ね?ママ?」 「…ほんとに」 「あーお腹すいた!ママぁ!今日、オレ唐揚げ食べたい!ママの唐揚げちょーぜつ大好き!」 「…うん。そうだね。久しぶりに唐揚げ、しようか?」 好孝は、ぴょんととび起きて、部屋の中をくるくると駈け出した。 両手を突き上げてゴールに飛び込もうとするランナーみたいに。 やったー やったー 歌うように言いながら駆け回る。 ほんと、子犬みたいだ。 「やったーっ!!」 「なに?大げさに?」 「ママ、笑ったぁ!」 ~完~
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