9:miracle of the night of midwinter

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「うん!ママはできないからかばっちに肩車してもらおうと思ったんだぜ!オレ!」 早速、肩にナルを乗せると拓斗はクリスマスツリーを指差した。 「ほら今年はクマでさえペアリング成功だぞ」 「はぁ?」 何言ってんだかと思いつつ、拓斗の指が示す方へ目をやる。 輝くクリスマスツリーの上の方に青と赤の編みぐるみのクマが飾られている。 なんとなく、微妙に場違いチックだな。だって、あれってどう見てもクリスマス用の飾りには見えないし? クリスマスなら赤と緑でしょ? それにクマって? 何でクマ? せめて トナカイだよね? 「あれがどうかした?」 「あれさ、3年くらい前から青クマだけ飾られるようになってさ。休暇で帰ってくるたび、気になってたんだ」 「へぇ」 「それが今年は赤クマとペアだもんな。こりゃ奇跡だ。うん」 「何が、なんの奇跡なわけ?」 「や。それはわからん。けど、きっとすっごい物語があるんだよ」 「あーはいはい。そうですか」 ……あんなクマに注目してるのって、拓斗だけじゃないの? ったく。 ふるふるっと頭を振る。と、唐突に 『好き』とユニゾンの声が耳に響いた。 つつつ、と今度は声のした方へ目をやる。そこには、互いを見つめ合う二人。 男と女。とは表現しがたい。 子供じゃないけど大人とも言えない。 お年頃の、まさに男子と女子。 まぁ!なんて正統派の、照れた笑顔の二人でしょう。 The青春。 羨ましいくらいの、直球の可愛らしさ。 今、まさにお互いに自分の思いを打ち明けたのね。 そして、両想い。 あらまぁ、これはこれは、おめでとう。 まわりに人がいるとか、考えないんだ。 ふぅん。 思わずくすりと笑ってしまって、ごまかすように軽く咳払いしてみる。 ゆっくりと目を上げて、拓斗を見る。拓斗は、にやにやしている。 「若者も恋を成就させたわけやね。いいねぇ微笑ましい限り」 「何言ってんのよ。拓斗だって27歳の若者でしょ?」 「はぁ?あーそうっすよね。月子さんは33歳の、お姉さんっすもんねぇ。俺なんかぜーんぜん、相手にならないっすよね?」 「そうよ。それに私、母親なんだから。浮かれてらんないわけ。拓斗もいい加減、他あたりなよ?」 「でもさ、10年したら37歳の、43歳で、20年したら47歳と53歳……ありでしょ?」
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