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「俺も、ナルを助ける。けど、月子さんを見殺しになんて絶対にしない。ナルの後で、すぐに頭も体もフル回転させて、絶対に何があっても月子さんを助け出す」
「オレもいるから!オレもママ助けるから!オレとかばっちの二人なら、オンナ一人くらい助けられるって!な?かばっち?」
拓斗は、わははと豪快に笑うと、ナルをひょいと肩に乗せた。
「月子さん、ケーキ食おうよ!亮介さんが好きだったケーキ屋、あるんだ」
「亮介が好きだった?」
でも亮介、ケーキは滅多に食べなかったよ。
食べても、いつもチョコレートケーキで……
「そ。ナル、あっちにすっげーうまいケーキ屋さんがあるんだよ」
「オレ、イチゴのケーキはニガテなんだよ。クリーム、アマいから」
「お?そっか。じゃあチョコレートケーキはどーだ?」
「いいねぇ。オレ、チョコケーキは大好きだぞ」
ナル、あんた
チョコケーキ食べたことあったっけ?
……。
え?ていうか……。
ナルってば、イチゴのケーキ、苦手だったわけ?
う、嘘。マジで?
知らなかったんだけど?
自分に呆れる。
「ナル、サンタさんに何、お願いしたんだよ?」
「ランドセルだよ!ちまってんだろ?オレ、しょーがくせーになるんだぜ」
「おお!だよな?ランドセルに決まってるよな!」
拓斗の肩の上で楽しそうに笑うナル。
ナルを肩に乗せてすたすたと歩き出す拓斗。
なんだか、まるで普通の親子、みたい。
あたりをぐるりと見渡せば、もう、告白の声をユニゾンに響かせた若い二人はいない。
輝くクリスマスイルミネーションに見惚れて足を止めていた人達も、それぞれに歩き始めた。
雪は、相変わらず誰の上にも同じようにひらひらと舞い落ちて、消えていく。
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