9:miracle of the night of midwinter

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「俺も、ナルを助ける。けど、月子さんを見殺しになんて絶対にしない。ナルの後で、すぐに頭も体もフル回転させて、絶対に何があっても月子さんを助け出す」 「オレもいるから!オレもママ助けるから!オレとかばっちの二人なら、オンナ一人くらい助けられるって!な?かばっち?」 拓斗は、わははと豪快に笑うと、ナルをひょいと肩に乗せた。 「月子さん、ケーキ食おうよ!亮介さんが好きだったケーキ屋、あるんだ」 「亮介が好きだった?」 でも亮介、ケーキは滅多に食べなかったよ。 食べても、いつもチョコレートケーキで…… 「そ。ナル、あっちにすっげーうまいケーキ屋さんがあるんだよ」 「オレ、イチゴのケーキはニガテなんだよ。クリーム、アマいから」 「お?そっか。じゃあチョコレートケーキはどーだ?」 「いいねぇ。オレ、チョコケーキは大好きだぞ」 ナル、あんた チョコケーキ食べたことあったっけ? ……。 え?ていうか……。 ナルってば、イチゴのケーキ、苦手だったわけ? う、嘘。マジで? 知らなかったんだけど? 自分に呆れる。 「ナル、サンタさんに何、お願いしたんだよ?」 「ランドセルだよ!ちまってんだろ?オレ、しょーがくせーになるんだぜ」 「おお!だよな?ランドセルに決まってるよな!」 拓斗の肩の上で楽しそうに笑うナル。 ナルを肩に乗せてすたすたと歩き出す拓斗。 なんだか、まるで普通の親子、みたい。 あたりをぐるりと見渡せば、もう、告白の声をユニゾンに響かせた若い二人はいない。 輝くクリスマスイルミネーションに見惚れて足を止めていた人達も、それぞれに歩き始めた。 雪は、相変わらず誰の上にも同じようにひらひらと舞い落ちて、消えていく。
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