10:My Boss Your Hero

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ギュムっと拳に力を込める。 タイミングを計る。計るまでもないか?さっと振り上げて、ガツンって。 ちょろそう。 で、 泣きそう? あー本当にそうできたら気持ちいーだろうなぁ。 「え?聞いてるのか?晴海君」 「……はい、申し訳ありませんでした」 23回目の謝罪でなんとか解放された。 はぁ。冗談じゃないよ。「あのとっちゃんぼーやは」 自動販売機でコーヒーを買い、ソファに腰かける。無造作にまとめた髪を片手で解く。 上を向き左右に頭を傾けると、コキンコキンと肩やら首が鳴ってる。バリバリなまってる。 無意識にため息が漏れた。 時計を見る。 予約時間まではあと30分。 ま。コーヒー飲んで一服して出ても十分に間に合う。 コーヒーをすすりジャケットのポケットから煙草を出して火をつけようとした、まさにその瞬間にぶぶっとケータイが震えてメール着信を告げる。 去年、寿退社した元同期の由紀子からだった。 タイトル『ジャジャン』? 苦笑。脱力。 開けば、生まれたての赤ん坊を抱いた由起子の写メ。 すっぴんで汗ばんでそうで、でも少しも汚らしくない。むしろ、その真逆。 気高く誇らし気な笑顔。
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