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ぐっとハイボールを飲み干す。
ふっと子供の頃を、思い出す。
母さん、いつも酔っ払ってたな。
平日はどんな状況だって仕事に行ってた。自分の体調がどんなに悪くても、あたしの調子がどんなに悪くても。
母親一人での子育て。
父親は、出て行った。
あれって小学5年生だったっけ？
何日か続いた40度近い発熱で、何も食べられないあたし。そんなあたしを一人ぼっちで置いて母は仕事に行った。
自分が帰宅するまであたしが無事でいられるのか、まるで神様と賭けてるみたいだった。
母は、決してずる休みなんてしなかった。
きっとあの時……、
母の帰宅を待てずに、もしもあたしが死んでたとしても、母はそれをそのように受け止めたんだろう。
どんなことも真正面から受け止めて戦って、だから週末は、疲れて果てて、朝から酔っぱらって泣いてたんだ。
だって本人がそう言ってた。
頑張ったんだから酔っ払ってもいいでしょ？あんたのために毎日頑張って、夜も寝られなかったから、週末くらいいいでしょ？って。
泣いたって何も状況は変わらなくて、また月曜日が来て、淡々と母は仕事に出かけた。
結局、アルコールの障害で体を壊して、亡くなってもう10年だ……。
まさかあたしもそれと同じ道を？いやいやいや。それはないでしょ？
つか、こんな風に筋腫があって、普通に妊娠継続って、できるわけ？
2年前、流産した時には、そんなこと一言も言われなかったよ……。
デコボコしたいかにも居心地の悪そうな子宮だ。こんなところで無事に育つことができるの？
どうなるかわからなくて、またダメになるくらいだったら、いっそ早いうちに……
……おろす？
正也の顔を思い浮かべる。
正也は、どう思うのかな？
一応は、避妊して用心していた正也だもん。まさかこんな……想定外の妊娠を素直に受け止めてくれるのかわからない。
それに、5つも下だよ？これからの正也にこんな予測外の重荷なんて背負わせられない。付き合ってはいるけど、そんな話、したこともないし。
しかも、さっきの三崎の態度でわかった。
あれは正也がかなり好きなんだ。社長の娘だよ？将来有望じゃん。
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