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ずいずいと押しこまれるように正也に押されて玄関の中に。
それから当たり前のように、どうぞあがって?とか上がっていい?とかそういうのなしに、正也は靴を脱いで上がり込むと「ほらほら中に入ろうよ」と言いながら、ネクタイを緩め、あたしを通り越してどんどんリビングに入っていった。
なんでこうなるかな、と思いながらその背中についていく。
ん?どうしたの?正也。立ち止まってテーブルの上を凝視して?
あ、書類取り上げて読んでるね。やっばーい。
……って?正也、大股であたしの前に来た?
ど、どうした?
「まさかと思うけど、また一人でなんとかしようとしてた?」
「へ?」
「……マジで、いい加減にして欲しいな」
あ。怒ってるね?その顔は……。
テーブルの上のいろいろ、見ちゃったんだもんね。
でもさ、何でそこまでおっかない顔するの?
大丈夫だよ?迷惑かける気ないしさ……。
「確かに小袖課長のばか野郎っぷりも、由紀子さんのことも、三崎のことも、涼香さんには大したことないだろうけどさ!これは、さすがに」
「あの、でもさ、あの」
「言いわけすんな!」
びくっと体が震えた。
「俺、そんな頼りない?なんで、すぐに電話してこなかった?涼香さん、8時頃には帰るって言ってたろ?つーかケータイにも出ねぇし」
ふと時計を見る。いつの間に10時に?
「涼香さん、正直に答えて」
「……なに?」
「俺は必要?それとも……」
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