1:DEEP SEA

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 「あらま大胆」  「ユリが、てっちゃんのことで心配して悩んで、少しだけ泣いて、そんなユリ見てたら……つい」  「どこに?まさか?んもうっジン!」  チヒロは肩をいからせてよじよじと、かなりコミカルにヤキモチを焼いて見せている。  わざと……だね。たぶん。  「頭……っていうか、髪の毛?」    「ふぅん」  そう言って自分の頭を指差す。「アタシにも」  何言ってんだか、今すっごいまじめに話してんのに、と思うのに、チヒロは上目遣いで「じゃなきゃここで唇にキスしちゃうよ?」  脅かされたフリでチヒロの髪に素早く唇を落とす。  くすくすっと笑ってすっと気まじめな顔で私を見た。  「わかってるよ?」  「……何が?」  表情を消して、私をじっと見つめている。  瞳の奥が揺れる。揺らぐ。  「ジンがあの子をどれだけ大切に思ってるか」  チヒロと一緒にいるのは、海に潜るのと似ている。  「本当はどれだけあの子に触れたかったか」  小さな細胞の一つ一つが、揺らぐ波の干渉を受ける。    「ジンの口からあの子の話が出るたびに、胸が痛かった」   深く奥まで。  「自分のことも、自分の気持ちも、知らんふりで見ないようにして」  それは、互いに当り合って大きく離れまた強く寄り添う。  「その上、アタシの気持ちなんか全然眼中になくて」  繰り返すうち、やがては、同じリズムを刻めるのかもしれない。  「なのに、夕べ……受け入れた。すごく素直に……。どうしてかなって思った」  チヒロはグラスに残った液体を一息に飲み干した。  「……危ないなぁって」  「何が?」  「アタシも行く」  「え?」  「沖縄」  「何で?仕事は?」  「ジンの方が大事」  チヒロの顔をまともに見れない。  見たら、きっと全部全部、暴(あば)かれてしまう。何をしようとしているのか……。 
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