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走り出した車の窓を少し開ける。
ひょおひょおと細く冷たい風音。
空は曇り、呼び寄せられているような気分で銀治はハンドルを握っていた。
沙耶は目を細めて流れ去る景色を見ている。
「どうしてあの時、一緒に熱出したのかな」
その声にどうにもならない後悔の響きを聴き、銀治は胸を痛めた。
同じことは何度も考えた。
「…どうしてだろうな」
「一緒に、行ったのに」
「うん」
「どうして、行かなかったのかな…」
「そうだな」
「もし、一緒に行ってたら…あの事故って、なかったかな…」
「どうだろうな。どっちかの二人が事故って…いたかも?」
「あの日、カラオケに行かなきゃ良かったのかな」
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