11:Spring snow

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銀治は、前を向きアクセルを踏み込みながらそっと沙耶の手を握った。  指先どころが手の平全体が冷たい。  「…いいのかな?本当に」  「心配するな」  「私達ってどうして…」  加奈子は少しだけ背伸びをして、桜の細い枝先についたまだ開き切らないつぼみに手を伸ばし、ぷちりとそれを折り取った。  「加奈子、花は散るんだよ?」    加奈子がつぼみを春樹の鼻先に近付ける。  淡い淡い香りが立ってる。  春樹は深く息を吸い込む。  「開けばもっと香りは強くなったのかな?」  「つらいのか?」  「…よくわからない。今日、この日までずっと夢の中にいたみたいで」  春樹は空を見上げた。  静かに空気が締まっていく様子が見える。  
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