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なのに、たぶん食事も摂れずにいたのだろう。
加奈子の葬儀の最中に沙耶はふらりと意識を手放した。
その体が崩れてきて、銀治は必死に抱き止めた。
あまりの軽さに銀治の胸がぐっと塞がった。
まさか沙耶までいってしまうのでは、そんな嫌な予感が頭をかすめた。
自分と、親友と恋人、友人。四人のうち二人はもう戻らない。
今までよく四人で行動していたのに、お互いに最愛の人を失くしてしまった。
自分はなんとか保っているが、沙耶はもしかしたら…。
このままでは自分だけがこの世界に取り残されるんじゃないかと、焦りに似た気持ちを抱いた。
加奈子に対する愛情が薄れたわけではなかった。
それぞれ恋人を失くした悲しみも痛みも、抜け殻になったような喪失感も十分に理解できたから、沙耶と一緒に居るのを時につらいと感じながらも、労わるべき存在の、そのぬくもりや息遣いが自らの生きる理由に、糧になっていると銀治には思えた。
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