11:Spring snow

7/14
前へ
/324ページ
次へ
なのに、たぶん食事も摂れずにいたのだろう。  加奈子の葬儀の最中に沙耶はふらりと意識を手放した。  その体が崩れてきて、銀治は必死に抱き止めた。 あまりの軽さに銀治の胸がぐっと塞がった。  まさか沙耶までいってしまうのでは、そんな嫌な予感が頭をかすめた。  自分と、親友と恋人、友人。四人のうち二人はもう戻らない。 今までよく四人で行動していたのに、お互いに最愛の人を失くしてしまった。  自分はなんとか保っているが、沙耶はもしかしたら…。  このままでは自分だけがこの世界に取り残されるんじゃないかと、焦りに似た気持ちを抱いた。 加奈子に対する愛情が薄れたわけではなかった。  それぞれ恋人を失くした悲しみも痛みも、抜け殻になったような喪失感も十分に理解できたから、沙耶と一緒に居るのを時につらいと感じながらも、労わるべき存在の、そのぬくもりや息遣いが自らの生きる理由に、糧になっていると銀治には思えた。
/324ページ

最初のコメントを投稿しよう!

57人が本棚に入れています
本棚に追加