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流れ出したのは、4人組のバンドの、2年前のこの時期に流行った歌だった。
出会いと別れ、旅立ちをテーマにしたこの歌をあの日、最後に銀治と加奈子、沙耶と春樹で歌った。
沙耶は零れた涙を慌てて拭う。
銀治はそれに気付かないふり。
まっすぐに前を向きひたすら車を走らせて城址公園に向かった。
「ほら。やっぱり」
「…うん。来たね」
ひらりと最初のひとひらが空を離れて落ちてきた。
じゃりじゃりと足音が二つ、聞こえてくる。
加奈子と春樹は桜の木の下で、二人が寄り添い歩いてくるのを見ていた。
「ちょっと銀治ってば、カッコ良くなっちゃってるんだけど?」
「…沙耶」
二人は桜の木の下まで来ると立ち止まって見上げた。
花開いた桜達。枝と花の間から雪空が覗く。
「今日で正解だったろ?」
銀治は桜の木に向かって言った。
加奈子と春樹は、銀治と沙耶を見つめた。
二人に自分達が見えていないのはその表情からもわかっていた。
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