1:DEEP SEA

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 「バディが必要でしょ?」  「……トレーニングは、インストつくし」  「ふぅん。浮気するつもり?」  「浮気って……」  「ジンはアタシのもの」  「そんな勝手に」  「嫌?」  「え、あの」  チヒロは私が耳元にやっていた手を取って、両手で包みこんだ。  不思議そうに耳元を覗きこむ。  「耳、どうかした?さっきから、すごく気にしてるみたいだけど?」  「え?あ、別に」  話の方向がずれて、ふっとため息をついた時、ぎゅっとチヒロがその手に力を込めてきた。  「アタシ必死なの。やっと見つけたのに。言ったでしょ?生育環境が限られてるって。やっと同じ種類の、つがいの相手が見つかったのに」  「……つがいって」  ジン……と、チヒロは囁く。  その声に、ふるっと背筋が振動する。  「……チヒロ、そんな大げさな……ほんの2、3か月だよ?」  「先週、一緒に潜ったでしょ?あの時のジンは変だった」  胸の中で心臓がどきっと口のすぐ下まで跳ね上がった。  「アタシ、ジンは全然気づいてなかったと思うけど、この半年、ずっとジンだけ見てたんだよ?」  そっと顔を近づけてくる。鼻が赤い。声が少しだけ震えてる。まるで泣くのを我慢しているみたい。  「チヒロ?」  「アタシ、一緒に行く。上がってくる気のないダイブなんて、だめ」  チヒロは小首をかしげ、私の両目を見つめる。右、左、右……その奥に隠してあるものを見つけ出そうとしている。 その目を潤ませて。白い犬歯を見せて笑う。  「ね?否定しないんだもん。心配なんだ」  揺らぐ。  「一緒に潜ろう?」  揺らいでる。  「ジンのバディに相応しいのはアタシでしょ?ジンだってアタシのことバディだって言ったじゃない?」  深い海の底に   「どこまで行けるかわからないけど、行けるとこまで」  もうその秘密を置いてこなくていいの?      「それ以上行けなくなったら?」  「アタシは強いのよ?心配しないで、海の中でも陸の上でも空の彼方にだって、アタシがジンを連れてく」
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