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加奈子はまた溜息をついた。
「んもう。何よ?約束は守ってくれたけどさ」
手の平の上で溶けていくひとひらの雪。
そのままの形でとどまっている花びら。
「行かなきゃよかった…」
沙耶は、鼻の頭を紅くして、あの日の自分達を見ているように、少しだけ顔をしかめた。
「なんで沙耶と銀治は熱出したのかな」
「あの日のカラオケ、二人とも熱唱してたよな?」
「あーマイク?顔、超くっつけてたもんね。ったく銀治ってばさ」
「俺達も、二人が来れないなら止めとけばよかったな?」
「雪と桜の…お花見会」
「…なんか、悔しかったのかな」
加奈子が手の平に残る桜の花びらを見つめて肩をすくめる。
春樹はそんな加奈子の肩に静かに手を置いた。
ぽんぽんと叩くとにやりと笑った。
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