11:Spring snow

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 加奈子はまた溜息をついた。  「んもう。何よ?約束は守ってくれたけどさ」  手の平の上で溶けていくひとひらの雪。  そのままの形でとどまっている花びら。  「行かなきゃよかった…」  沙耶は、鼻の頭を紅くして、あの日の自分達を見ているように、少しだけ顔をしかめた。  「なんで沙耶と銀治は熱出したのかな」  「あの日のカラオケ、二人とも熱唱してたよな?」  「あーマイク?顔、超くっつけてたもんね。ったく銀治ってばさ」  「俺達も、二人が来れないなら止めとけばよかったな?」  「雪と桜の…お花見会」  「…なんか、悔しかったのかな」  加奈子が手の平に残る桜の花びらを見つめて肩をすくめる。  春樹はそんな加奈子の肩に静かに手を置いた。  ぽんぽんと叩くとにやりと笑った。
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