11:Spring snow

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 「仕方ねーなっ!お前には、俺がついててやっからよ。ずっと、一緒にいてやるよ」  加奈子はくすくすっと笑う。    「仕方ないなぁ・・・一緒にいてあげてもいいよ・・・?」    「まぁ二人が幸せになってくれれば、もういいよな?」 春樹は加奈子を見つめた。  加奈子は諦め顔で肩をすくめると、笑って頷いた。  加奈子と春樹は上を見上げる。  雲の切れ間から眩い光がさしている。  その光の帯が二人を照らし出し「行こう?」と春樹が言った。 「そうだね。うん」  加奈子は答えて、沙耶と銀治に顔を向けた。  「二人は生きて、幸せになって。思い出さなくてもいいから、忘れないでね」  さわさわと緩く風が吹いて桜は囁くような音を立てた。 「俺達は忘れない。また会おう」  銀治は沙耶の肩を抱き、舞い落ちる桜を、雪を、雲間から差す光の帯を見つめた。  「幸せになってもいいのかな。本当に」    「どうせいつか俺達もいくんだから」 沙耶の小さな呟きに銀治は空を見上げたまま笑った。  瞬間、風がどうと吹いて桜はざっと音を立てた。  煽られて枝を離れ巻き上げられた花びらは雪と共に、ひらりひらりと舞い踊り、光の帯の中で束の間、相反するものを結び解いた。 ~完~
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