12:Will meet again someday

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あのメール その時が来たら 笑い飛ばしてやる。 覚悟しとけ。 来ればいい。 そんな時が。 これから先もまだ 長く続く予定のアタシの人生から見れば ほんの一瞬。 あいつと絡んでた時間だって きっと瞬き程度の“時間”だ。 それにしても… 秋の早朝 温泉宿に独り か。 「あーもー素泊まりって言ってたよな」 ちぇ。ビンボー人め。腹減った。 家に居れば 何かしら 食べられるモノが あるっていうのに。 「あ!あのやろー金払ってあんだろーな」 なんで こんなところまで 来ちゃったんだろ…。 ほんの14時間前にも 同じこと 考えてた。 そう思うと 笑えた。 14時間前 だった…。 電車が 線路を踏みつけ踏みつけ前進する 振動に ゆらゆら揺られながら…。 なんで こんなところまで 来ちゃったんだろ…。 こいつ 荒口恭也(27)と…。 とある温泉地に向かう へっぽこ急行列車の ボックス席に座って 窓の向こう 流れ去る景色を 見ながら アタシ(27)は ぼんやりと思った。   なんでへっぽこ急行列車かってーとさ… 途中の駅から 全部停車 してるんだよね。 それはすでに キューコー じゃなくて カクエキ じゃん? まー そうは言っても 駅間がね 駅と駅の間がさ 20分くらいかかってるね。 サンゴー(350ml)缶なんざ 飲み終わって 時間が あまるってーの! 手持無沙汰だよぉ! なんか ゲーム的なもの ないのかぁ!? ったく! こんな時に 気がきかねーっつーの! って 内心の叫びは隠す。 視線を感じた。 荒口がイケメン笑顔をアタシに向けている。 うは!客観的に見ればマジでイイ男。 ムダにイケメン。ムダメン。 黙ってれば。 口縫い付けてる時 限定イケメン 荒口恭也。 こいつの この口から 今まで 散々 聞かされてきた エロ話 バカ話 ヘムタイ話。 こいつの カッコ悪ぃ初体験も  その後の鬼畜のような女遍歴 も 男遍歴(好奇心に負けた結果の一人だけ)も  そのほぼ全てを知ってるのは  全世界の人類の中 この世で アタシだけ。 もう 何年 つるんできたっけ…。 こいつとアタシは親友。 性別は越えた はずの。 だるそうに列車は ぎしぎしと音を立てて停まった。 『時間調整のため10分停車致します』 しわがれ声のアナウンスに ため息が 出た。
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