12:Will meet again someday

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仕方ない か。 ホームに目をやる。 珍しいことに ホームには 木が生えていた。美しく 紅葉している。 線路側の 向こうにも 赤く色づいたもみじの大木が 枝を 広げている。 日没前の青い空が だんだんと 茜色に染まろうと していた。 まるで 金雲母や白雲母の粉を 含んでいるように 僅かに発光している 大気の中  もみじの大木は ぴんと張り詰めた枝先を ここまで届かせようと 伸ばしていた。 あの葉っぱ狩れそう。 「なーウララ?」 「ち。名前で呼ぶな!」 ドカッと 荒口の胸に 拳を沈めた。 瞬間 ドハゥッ!と 意味不明な 奇声を上げた荒口は 胸元を抑えた のに へらへらーっ と笑う。 「…ウララちゃん?」 「呼び捨ての問題じゃねー!」 「えーじゃー何て呼べばいいんだよ?」 ちょっと 今さらだけど アタシの名前は 十八女 麗(サカリ ウララ)。 言っとくけど いちお  さかりって名字 由緒正しいよ? 安徳天皇が なんちゃらかんちゃら…。 つか十八の女って“さかり”なんだ。 18から“さかる”ってこと? さかり さかる さかった… さかる ってさ…あげぽよーっ(上向き矢印)てやつ? 勢いが盛んになるとか 繁盛するとか… 発情する…とか んまあ  …そんなよーな意味 …だね。 18で“さかり”始めた のに なんで…こいつとは… 「なー?」 「…いつも どーりでいいじゃん?」 「サカリ?」 「そう。 それ」 「ウララは?今日は 俺 名前で呼びたい気分的な…?」 ドガッ!再度 拳をくれてやる。 ウハッ!奇妙な声を 再度聞く。 …ウララって ウララカ=麗か(うららか) 空が晴れて 日が柔らかく のどかに 照っている 様子…とか? アタシに のどか って ないでしょーよ。 ったく! つか はやく発車して とっとと目的地に着きやがれ! 「もー乱暴者だなぁサカリ ビール足りない?」
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