12:Will meet again someday

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飲み干してたこと に 気づいてたんだ 荒口。 ムダメンのくせに。 ムダにイケメン顔で笑って ぱっと立ち さっと駈け出す。 目で追えば さっさと電車から降りて ホームの 弁当売りのおばちゃんから ビール お茶 お菓子 弁当を 素早く買って 迅速にお金を払い お釣りを受け取り  おばちゃんに 笑顔 と 投げキスを …もう いいや。 目を 荒口から線路側の窓にやった。 もみじ。 ほんと 見事に 赤いな…。 窓から 手を伸ばしてみた。 お?届いたじゃん。 …まじで?狩れるかも? ぷち って 赤い葉っぱ 一枚アタシのもの にした。 ん。いいよね。記念だもん。 つか 何の記念? モノオトのない 静かな車内 どこかで 虫のこえ。 線路の脇 の草むらに? あれだって 列車が走り出せば  すぐに 聞こえなくなるんだ。 たったっ と足音が 聞こえてきて でも 振り返らない。 荒口だ。わかってる。 両手にビール お茶 お菓子 弁当… アタシへの 笑顔…。 見ない。 見るまでも ない。 鮮明に想像できる。 つか なんで ここに 居る んだろう。 こいつ と 一緒に。 泊まりがけ で 温泉に。 明日の朝 アタシは 大丈夫 なのか な。 ポケットに そっと さっき 摘まみ取ったもみじを しまって…アタシは 思った。 やがて もみじのホームを後にして 列車は 走り出す。 ビールを飲んで お菓子をつまんだ。 「弁当って?夕飯 宿じゃないの?」 「素泊まり」 「何だよ。ビンボー人め」 「サカリも だろ?」 で くだらない 話を聞いてるうちに 目的の駅について そのまま 宿泊予定 の宿に チェックイン。 もう ほとんど 夜だ。 宿帳に 荒口が 名前を書く。 アタシの名前を 家族欄 に 書いてる。 気づくと ちょっと笑っていた 自分 の舌を 軽く噛む。 痛いってーの! 「どしたの?ウララ?」 そんな 綺麗な顔 で 聞かないで 欲しい。 ウララ。 サカリじゃなくて。 ウララ。 胸が騒ぐから やめろ。
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