12:Will meet again someday

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がつんっと 肘を 荒口の腹に押し込む。 「ウハッ!」 荒口がうめいた。 ちら見。荒口 腹を押さえて アタシを見てる。 け。 オーバーなやつ。 さっき 一瞬 ちょっとだけ いいかも的なこと 感じたなんて 全部 無かったことにする。 「ばーか」 振り向きもしないで 言ってやった。 「ったくぅ乱暴者だな。ウララ」 「アタシ やり友じゃねーし」 「んなこと…わかってる」 「じゃ何だよ?」 「甘えたい」 「女 作れば?」 荒口は ぷいと横を向いて 口を尖らせた。 尖らせても イケメン のまんまの荒口。 ばつが悪そうな表情 を 浮かべたのが わかる。 「…作った」 「へぇ?」 「コクられて。できた。彼女」 「じゃーその女とやりゃいいだろ?」 「…結婚 する」 「…だったら なんで?」 ひやり と 心臓が冷たかった。 「甘えられない」 はぁ と 思いきりため息を ついて 聞かせてやった。 窓に 顔を 向ける。 口をつぐんで 音を聞く。 意識を 外に向ければ 聞こえて きた。 さっきから 絶えることなく 静かに響いていた せせらぎ。 風が 紅い葉を揺らし 葉と葉の間をすり抜けて ざわざわ 葉が揺れ 風が鳴る。 りぃんころしっちょぎりゅ…りぃんころしっちょぎりゅ…あの虫の こえも。 なんだって 断らなかったんだろう。 この空間で 荒口とアタシの二人きりで 何してるんだ? 結婚するって?「荒口、お前なぁ」 甘えたい とか 甘えられない とか 何だよ? 何がしたいんだ?どうしたらいいんだ? 荒口を 見ないまま言う。 「なんだよ?ほんとに 荒口は」 「会うなって…言われた」 「は?」 「お前に。彼女に 一応女の親友がいるって言ったら」 呆れた。「お前…ばかだろ?」 「…うん。みたい」 そう言って 荒口はそーっと かなりそーっと アタシの前に にじり寄って来た。 花の上に止まった蝶を 捕まえるみたいに。 あ? 蝶っつーよりも 蜻蛉(とんぼ)  かな? 柵に止まった蜻蛉を 捕まえる子供みたい。
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