12:Will meet again someday

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失くしたことに気付いた時から 胸が 痛むなら  その痛みの意味を 知らずにいられるよう 共に 互いを失えば いいんだ。 「もみじに」と荒口が言った。 「え?」 「もみじになろ。生まれ変わったら それなら ややこしくない だろ?な?サカリ…」 「荒口…」 「同じ木の 同じ枝の 隣同士。同じ時期に色づいて 同じ風に吹かれて 落ちて」 綺麗な涙を 流す ムダメン荒口の 無闇なロマンチック発言に ゆらり心が揺れた。 はらり風に 一枚のもみじ 枝を離れる瞬間を見た。 スローモーションみたいに 水面に静かに落ちて さらさらと 流されて行く。 月の光に照らし出されて 一世一代の舞台のよう。 あれはアタシ?それとも 「あーもー!ばかは置いて 温泉行ってこよ。あんたは あんたのオンナのところに 帰りな」 一人 露天ぶろを満喫し 誰もいないのをいいことに 少し泣いた。 もし まだ荒口がいたら…その時は…どうするかなと 考えながら 浴衣姿で部屋に戻ると 荒口の姿はなかった。 テーブルの上に アタシのケータイ  の上に …もみじ? さっき千切って 飛ばした はずなのに? あ。 荒口だ。 さっきの ホームでビールだのなんだの買い込んだとき あのホームの もみじ…。 それを手に取ると ケータイが光ってた。 メール受信を告げているケータイを 少しの間 見つめた。 受信ボックスを 開く。荒口からのメール だ。 『すいぶん前に書いたけど お前に送るか悩んでた。』 その言葉に続いてるのは 無闇にロマンチックな詩。 読み終わって 読み返す。 何度もなんども読み返す。 「“おまえにだけ 聞かせてあげる 俺の羽音”…か」 なんで今 このタイミング?
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