12:Will meet again someday

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それ は 恋っていわない? それ を 愛っていわない? 言葉でなんて形容しても どんな音で 表現しても 胸の奥 頭の中 腹の下 湧きだす思いは 形 に ならない。 ぽろっと涙が落ちた。 アタシだって 離れ離れになる なんて 本気で考えたこと なかった。 「やっときゃ良かったかな」 いや。やらなくて正解だって。きっと。たぶん。 今は。 荒口のもみじを 窓からそっと風に 乗せた。 ひらりひらりと それはうまい具合に飛ばされて 音も立てずに水面に降りた。 ちゃらちゃらとささやかな川の音が 耳に聞こえてくる。 風が 葉を揺らす音。 名前も 姿も知らない 虫たちの声。アタシの思い。あのバカの気持ち。 闇の中で 一つの音のように 混じり合って 響き合っている。 暗さを増し より艶めき始めた青白い月光に照らされて それは流れていく。 先に流れて行ったもみじに あれは追いつくかな。 追いつきゃいいのに。 いや? 追いつかんでもいいか。 どこに流れ着こうと もう どうでも いい。 同じ場所に流れ着いても 違う場所にたどり着いても ただ流されて行けば なんでこんなところまできたんだろうって 思うんだ。 流れに逆らわなければ… 痛いような これから痛くなりそうって予感しているような  なんだか形容しがたい気持ちを抱いて 冷たい布団にもぐりこんだ。 隣にぴったりくっつけてある 寝る人の無い布団。   「区切りをつけたい」 と言った 荒口の顔を 思い出して ぎゅっと目を閉じた。   つけさせるか ばーか。 意地でもぐっすり眠ってやる アタシは あいつに向かって言って ぎゅっと 閉じたまぶたに 一層力を込めた。 闇に体を伸ばして 耳に響く音の中から たった一つだけの…羽音を 探しながら。 ~完~
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