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で、羽宮類だって女だ。
ないだろーよ?そんな……。
にしても…っんだよ…。仲良さそうに。面白くない。
つーか!ムカつくと言っていい心境だ。
なんだって羽宮類にその話をしてるんだ?
結月がハードルを持ち上げようとした。
「あ。それ重いから。結月はこっちな」
なんだなんだ。え?その女子のくせにその男前な発言は。
しかもスタート合図用のピストルを結月に差し出しちゃって。
女子に重たいものは持たせないって?
…ますます男前だな、おい。
「うん。ありがとう」
明るい声。今日は一度も俺に向けられてないトーンに心がメラメラと乱れる。
体の中で金木犀の香りがグルグル駆け巡っていて、それで俺は呼吸も乱れてることに気づいた。落ち着け。俺。
羽宮類がハードルを倉庫の中に運んでいく。結月はただくっついて、倉庫を出たり入ったりしているだけだ。なんだよ?嬉しそうに。
「類先輩。あたしも悪かったのかな」
「なんで?無理強いするのが悪いんだ」
「でも、光太郎にずっと我慢させてて」
いや、待て。待て待て待て。
なんだって羽宮類にその話をしてるんだ?
なんだって相談を?
「あのさ、結月……」
な、なんだ?羽宮類?その憂いを滲ませた顔は、どした?やだな。ジワッと頭の皮に汗が滲んだのがわかる。
「はい?」
淡く、羽宮類が笑ってる。
「待つか、段階踏んで、ちゃんとその気にさせてくのが男だろ?」
「…うん。でもね、類先輩」
羽宮類は持ち上げたハードルをおろした。ぐっと結月の片腕を引き首に手を回す。顔と顔が近づく。
お、おいっ!羽宮類っ!何やってンだっ?
「結月は悪くない。あと先輩はやめ。今はクラスメートだろ?」
「あ…うん。わかった」
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