13:Fragment of delusion

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「更衣室到着に3分で着替えにも3分?走らないとギリだね」 「だぁっ!」 ムカついた気分のまま、俺は羽宮類を追い越しダッシュ。背中で薄い笑い声を聞いたけど、振り向いてる暇はなかった。 お蔭でホームルームの司会も噛み噛み。で、結月は頬杖ついて窓の方しか見ないし。 羽宮類は一番後ろの席から俺のことじっと見てるしで、それ以外のクラスメートが温かい目で俺を見てても、なぜだ?アウェーな気分だった。 ったく!ムカつくっての。 終礼のチャイムの後、結月は鞄をさっさと持ち上げとっとと教室を出て行った。 俺はと言えば、月に一度の掃除の総チェックだ。こんな日でも職務遂行…。 総チェックの日は、各学年のそれぞれのクラス委員長が集まって、全教室、特別活動室、部室、階段、廊下、トイレまでをきちんと掃除が済んだか確認して回るわけ。くそう。早く帰りたい。 「遠藤先輩。ハードルカッコ良かったですね」2-Aのクラス委員長の言葉も耳を素通り。 「え?あ。サンキュ」って言いながら、早く帰って結月にメールをって考えてた。 「そう言えば、今日、彼女さんと一緒にいたイケメンって誰っすか?」と1-Cのクラス委員長が言えば「あ、あいつ女子だよ?な?遠藤」3-Bのクラス委員長が答える。 「え?ホントですか?」と1-A。「けど、女子と付き合ってるらしいって」と2-B。「しかも2こ上。わけありで2年休学してたの。噂だとコドモ産んだとか?」と3-C。 一同、同時に顔を見合わせた。 「うそっ!」多重奏の声。 お前ら、好奇心で顔がテラテラしてるぞ? ……そうなんだ。そういう変な噂があって。だからクラスでも微妙なんだ…けど美形だし成績も優秀だし、スポーツ万能だ。群れない。遠巻きにヒソヒソしてる奴らもいるけど、そんなの全然意に介してない。大人?なんか、考えてみたら非の打ちどころがない。イヤミなヤツだな。おい。
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