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おかしな噂くらいあってちょうどいいっての!
でも、だからってだな…。
「おかしな噂話を流すな!俺のクラスメートだ!」
一喝してやった。
窓から夕陽がきれいに見える。廊下にもオレンジ色の光が差し込んでいる。グランドでは女子サッカー部の連中が1個のボールを奪い合って走り回っている。
その中のひときわ動きのいい奴。羽宮類だ。
足元にあるボールはよく懐いたペットみたいで、羽宮類の思うままに駆けて、キーパーの手を逃れ、勢いよくゴールに飛び込んでいった。
喜び合う仲間から少し離れたところに羽宮類はいる。あ。そうか。あいつは部員じゃないんだよな。大会で勝つために出場を求められただけだ。なんての?傭兵?
一匹狼。孤高の。
なんだかわからない。寂しい気分になった。きっとこのオレンジ色の太陽のせいだ。舞う埃すら美しく見える。
全部終わって日報書いて、担任に報告してオッケーもらって、やっと解放されたのは最終下校時刻だった。もう暗いよ。くそ。結月、どうしてるかな?まだ怒ってる?電話は気が引ける。メールだな。
校舎を出た。誰もいなくなったグランドに羽宮類がいる。ボールかごを引きずって倉庫の方へ歩いていた。気が付くと俺はその後をつけていた。
「ちょっと待てよ」と呼び止めると羽宮類は立ち止まった。
少しだけ首を回して俺を見る。冷静そのもの目だ。聞くべき話かどうかを判断しようとしている目。
んだよ。ムカつく。だけど
まさか呼び止めといて、いきなりそうは言えない。
「なんで一人で片づけてンだ?」
「……最上級生だからな」
「って。普通、後輩がやることだろ?」
「早く帰さないと。もう暗い。危ないからな」
当たり前だろ?と言わんばかり。
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