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「お、お前は危なくないのかよ?」
片眉がぴくりと上がりゆっくり元の位置に戻る。
「どうだろうな?」
そう言って肩をすくめた羽宮類はザリザリザリッと軽々ボールかごを引きずって、倉庫の前で立ち止まる。
ガタつく扉も難なく開けて、俺をまるきり無視してボールかごをしまった。ガラガラピシャンと扉を閉める。
「……で?」振り向いた羽宮類が言った。
「は?」
「何の用?」
「え?あ……いや」
羽宮類はふっと笑った。「遠藤、さっきの、妬くなよ」
図星!ずきゅん!と胸を撃ち抜かれた気分を勢いでごまかそうと、俺はした。
「はぁ?意味わかんねぇ。なんで俺が妬かなきゃなんないだよ?」
俺の言葉に羽宮類が呆れたように小さく首を振った。自信たっぷり迷いのない足取りで俺の方に歩いて来ると真正面で止まり、少しだけ顎を上げて俺を見る。
「お前は人の気持ち、全然わかってない」
思わず、チ、と舌打ちしちまった。きっぱりと言い切りやがって。人知れず庇ってやったのに!つーか!
「なんだよ!お前にはわかンのかよっ?」
羽宮類は俺を見上げながらも、見下したような瞳で見ている。うっわ。何この迫力の目。
「お前とは違う」はき捨てるように言うと立ち去ろうとした。
めらっと胸の奥が燃えた。お前は何様だよっ!思わず羽宮類の手を掴む。羽宮類は体をすっと横にずらして振り返った。肩を押されたと思ったら俺は無様にひっくり返ったようだった。
あれ?今、何が起きた?
何で空が見えるんだ?金木犀が空に突き刺さってるみたいだぞ?
ガバッと慌てて上半身を起こす。完璧に俺を見下ろすその目は冷たい。ばね仕掛けの人形みたいに立ち上がる。パパパンパンパンと尻やら腿やら膝やらの砂埃を叩き落す。くすりと笑われた。
ブワッと心臓が沸騰した。なんだこの余裕。くっそぉ。ビビらせたい。どうにかしてコイツに勝ちたい。と、フツフツと思う。
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