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じゃあなと言わんばかりに、ヒラッと揺れた羽宮類の手を強引にひっぱり引き寄せる。なぜか抵抗もなく俺の胸に抱かれた羽宮類は予想以上に小柄で腕の中にちょうど納まった。
あれ?コイツってここまでちっちゃいのか?サイズを確かめるようにぎゅっと抱き締めてみた。しなやかでされるがままの羽宮類は、少しも抗わない。バラの香りに薄く汗の匂いが混じってて、それが俺のどっかをビシビシ刺激している。あ。なんかヤバい、のか?これは。
「……それで?」囁くような声で羽宮類は言った。
今度は俺が腕の中の羽宮類を見下ろす。羽宮類は取り乱すこともなく涼しい顔で俺を見ている。悔しい。なんだよ。その顔は。こんな展開は予想外だろ?少しは怖がれってんだ!お前は女で俺は男だぞ!
「お前、バカにしてんのか?」思い切り低い声で言ってみる。
「どうかな」赤い唇が余裕たっぷりに動く。
ピキッと思考が止まった。追い詰めたつもりだったのに逃げ道がないのは俺のほうだった。
こんな風に抱き締めちまって、この先、どうすりゃいいんだよ?睨みつけるように羽宮類を見る。動じることなく俺の目を見返してくる。……きれいな目だな。フッとそんな思いが浮かんだ。本当にきれいな目だ。迷いも恐れもなんもない。まっすぐに俺を見ている。
「こういうところを、結月は怖がるんじゃないのか?」
「は?」 「衝動的だ」
「結月は、俺の女だ」
「わかってるさ」
カッチーン!って来たっ!
「ンなら余計なことすンじゃねーよっ!何なんだよっ?ったく!」
くすくす。肩をわずかに震わせて羽宮類が腕の中で笑う。まるで小鳥みたいだ。
「なぁ遠藤、お前って男を抱けるか?」
羽宮類の赤い唇から飛び出した「抱く」という言葉が俺の柔らかいところをグイと押した。
妙に生々しい。ビクッとした。おかしな反応が出そうじゃねーかっ!お、抑えろ!俺っ!つーか、そのセリフ、どこに向かってンだ?見当がつかない。
「ンなわけねぇだろっ!何言って」
「だから遠藤は、こうやってボクを抱けるんだろ?」
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