13:Fragment of delusion

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ジリジリ詰め寄る相川玲子を羽宮類は冷たい瞳で見ている。 「脅迫か?」 「わかってよ!あたし類が好きなの!他の男子なんか好きになれないの!」 相川玲子がギュッと抱きついた時も、羽宮類は冷めたままだ。「……相川、悪かった」 「類?」相川玲子の声に期待が混じってすぐ戸惑った顔になった。じっと羽宮類を見つめている。 「たぶん、違うんだ。ボクは相川とはムリなんだ」 「やだ!そんなこと言っちゃ、嫌だ!」 羽宮類の瞳に温もりが宿っていく。なぜか俺の中にもバラの香りが濃縮されていく。羽宮類は悲しそうに笑った。 「本当に申し訳ないと思う。自分がナニモノかボクにはわかっていなかった」 「類?」 「相川のお陰で本当の自分が理解できた」 そっと相川玲子の背中を撫でている羽宮類が、本気で、その辺の男よりもずっと大人の男みたいに、俺には見えた。 「ごめんな。でも、ありがとう。相川」 「……本当にダメなの?」 「うん」 「だったら、最後に…キスして?もう一度だけ、抱いて?できるでしょ?」 羽宮類が相川玲子を抱き締めた。 「相川、そんなことして辛くなるの、お前だよ?」 「でも」 「ボクは気持ちがなくても抱ける」 「やだ。そんなこと言わないでよ」 「相川のこと、すごく好きになる男がこれから絶対に現れる。自分のことをすごく好きだって思ってくれる人間とシたら、ボクとシたことなんて、おままごとみたいだったって思うよ?」 「類……そんなのズルイよ」 「……だな。ごめん」 「キスだけでもいい。類のキス、大好きだった」 小さな、微かでユルユルと細く長いため息が聞こえた。羽宮類の。 羽宮類は、腕の中にいる相川玲子の頬をそっと撫でた。静かに顎に手をかける。額を、頬を唇を愛でるように唇で撫でていく。耳元に、顎先に焦らずゆっくりとキスを落とす。
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