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「あ。…うん。そう。中学の時」
「そっか…」 「…なんで?」
「なんか…変わってるなって」
「いい人だよ?」
「そっか?」
いきなり、結月がシェークのストローを凄い勢いで吸った。けっこう必死な顔だな。赤くなってるよ?すぼめた唇とへこんだほっぺは小さい子供みたいだ。
ジューッ音を立てて、ズルズルと飲み干す。口を離すとハァと小さく言った。
「な、そんなガキみたいな?」
「光太郎には誤解して欲しくないから、話す」
ピンと背筋を伸ばして結月は宣言した。
俺もグッと背中を伸ばして胸を開いた。
「中学の時、同じ部活だったの」
「え?サッカー?結月がっ?」
「あたしはマネージャー」ふふっと笑う。
「あ。だよな」
「で、ダンケリ、あ、あのね中学の時そう言ってたの、男子サッカー部をダンケリ、女子サッカー部をジョケリって」
ダンケリ、ジョケリ、なんとなく心の中で繰り返し言ってみた。固い毛がボーボー生えてる変な生き物の名前みたいだった。
「うん。それで?」
「類先輩がジョケリのキャプテンで、すごく可愛がってくれてたの。あたしのこと」
「うん……」だろうな。そんな雰囲気は今もビンビン残ってる。まさかそれって羽宮類が結月のことを?相川と羽宮類の会話を思い出す。
はぁと結月が胸の中にある塊を吐き出すように重たいため息をついた。
「合宿の時に、ダンケリのキャプテンが類先輩に告白したの。付き合ってって」
「へ…?へー」
「でも振ったの。皆の前で。きっぱり」
「ああ…」なんか目に浮かぶな。それ。
結月が空っぽのシェークのカップをギュッと握り締めた。カパンとプラ蓋がずれた。
「その夜、あたしダンケリのキャプテンに呼び出されて……」
「えっ?」ゴキンッ!心臓が嫌な音を立てた。
ゴンッゴンッゴンッ!とぶっ壊れそうな勢いで鳴っている。
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