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「あ、いや?ボクはもう解禁だけど、お前はまだ未成年だもんな」
「な、何でっ?」
「遠藤っていくつだよ?」
「えーと…18になった」
やややや。何を素直に答えてるんだ!俺!
「ボクは今日が誕生日。二十歳になったんだ」
「え……あ…」そうだった2コ上なんだよな。
隣に座る羽宮類の体温が空気を伝って俺に触れる。怖いものを見るようにそっと横目で羽宮類を見た。
赤い唇を僅かに開き、羽宮類がゆったりと息を吐きだして、その胸が僅かに動く。肺がゆっくり収縮したんだ。
羽宮類の吐き出した息に乗って、バラの香りが鼻から入り俺の細胞の隙間にヌルリと滑り込む。腹の下で青い炎がユラユラと立ち昇り、俺を焙る。
「お前、聞いたんだろ?」
羽宮類はあの落ち着いたハスキーな声で唐突に言った。
「へっ?」間抜けな声だ。何だ?何の話を?
「結月から」
「え?あ!…うん。聞いた」
「泣かすなよな?」
答えに詰まって俺は黙った。今でも結月が好きなのか?……まさか、そうは聞けないけど。
「ま、この前のキスは怖くなかったって言ってたから、大丈夫だろうけどな」
バクンと心臓が鳴った。ガバッと羽宮類に顔を向け、ガン見の体勢。目に映る羽宮類は薄く微笑を浮かべている。パクパクと口が動いてるのが自分でもわかる。けど、言葉はなんも出てこない。頭の中でカラカラと何かが回ってる。
「優しくしてやれよ?ボクみたいに」
「んなっ?」何を言ってるんだっ?何をっ?結月は何でこいつに報告をっ!?
クククっと公園の鳩みたいな声で羽宮類は笑う。
「お前って覗きが趣味なのか?」
「はぁあっ!?」
パチンと何かが切れたような気がして、挑むような声が出た。
「バカにしてんのかよっ!」
「怒るなよ。遠藤。ボクはただ事実に基づいて質問しただけだぞ?」
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