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「意味わかんねーっての!」
「見てたろ?ボクと相川の」
ズキュンと撃ち抜かれた。ズキンと痛んだ。
ハスキーな声で羽宮類は俺の急所を撃ち抜いたのに、まったく頓着してないように両腕を上にうーんと伸ばした。弧を描いて降ろす方腕を俺の肩に置く。
「気にするな。あれはお前のためにしたことだから。言ったろ?優しいキスを覚えろって」
「お、お前」
こいつ、一体なんだ?結月は誤解するなって言うけど、誤解どころか俺には理解ができないぞ!
羽宮類は俺の手から缶を取り上げる。またクイと煽るようにして飲む。コトンと缶を置く音がやけに耳に響いた。
スルリと俺の首に羽宮類の腕が巻きついた。
それが何を意味するのか、何をしようとしてるのか、わかってるような、わかりたくないような…ドキドキする心臓は先に進みたがっているような…止めたがっているような…。
でも、いや、まさか?だって、羽宮類は……。
羽宮類のバラの香りが俺をフワリと包んだ。耳元に熱感を覚える。羽宮類は俺の耳に唇をつけた。「結月を抱いてやれよ?」ささやく。甘い声でそそのかすように。
「え?」
真正面に羽宮類の顔が寄る。
「中学ン時の話、した後からお前の様子がおかしいような気がするって、不安がってる」
鼻先がくっつくくらいの近さで羽宮類は言った。
「……は?」あーだめだ。わからん。何を言ってるんだ?羽宮類の言葉を俺は理解できない。同じ言葉を使ってるはずなのに、なんで話が見えないんだ。「何のこと……だよ?」
「結月のことに決まってるだろ?」
結月が、不安がってる?そう言えば、結月のうかない顔は気になってたけど……。
「なんで?」結月はそんなことまでこいつに?
「お前が信じてくれてンのか、心配らしいな」
こんなに間近でこんなに真剣な目で俺を見る羽宮類の瞳は、揺るぎない輝きで満たされている。
こいつはほんとに「…結月が好き、なの?」
「好きだよ」
「え?」
直球で聞いた俺。即答した羽宮類。予測通りの回答。なのに、なぜか聞き返した。
ぐいと引き寄せられた。温かくて柔らかな胸の上に頭を押し付けられる。
「好きだ。大切に思ってる」
静かに耳元で囁く声にはきちんとした芯がある。
結月が好きって?…大切…って?
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