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何か、呪文でも唱え出しそうに少しだけ開いたクチバシの中がどういうわけか赤く見えて、背筋が震えた。
いつの間にか俺の手から逃れて、またたぶらかすように蠢く羽宮類の手を俺は掴んだ。
「捨てるとか……言うな」
「ん?」
「結月はお前にやれないけど、でも、あの……お前の気持ちを受け止められる……」あ?
女って言うべき?けど、なんか言いにくいな。「……やつが、そのうちに」
「は?」
「だ!だからっ!死ぬとか早まるんじゃねーよ!羽宮類っ!」
思わずその手首を強く握った。だってそうだろ?俺には理解できなくても羽宮類はクラスメートだ。仲間だ。そんな深刻な告白されて黙っていられるわけがない!
心持ち目を見開いた真顔の羽宮類は、俺をじっと見つめた。ゆっくり何度も俺の両目を交互に見ている。何か得体の知れないものが静かに高まっていくのが、わかる。濃いバラの香り。
「ぷっ」
へ?ぷって?吹き出した?な、何?何で?
羽宮類は、ぷっと吹き出した後「あははっ!」大きな声で笑い出した。はっはっはっはっは!
俺に手首を掴まれたままの羽宮類は、体を前のめりにして心底おかしそうに笑っている。
「え?……え、ちょ、あの?」
「おま……遠藤、バカ?」
「何っ!」
羽宮類は「誰が死ぬとか言ったんだ?」あははははっと笑い続けながら、そう言った。
「え?だって捨てる体って」
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